賃貸借契約デザインによる商業用不動産の価値向上

京都大学大学院 経営管理教育部
プロジェクト・オペレーションズマネジメント
立川 伸一郎

 この研究は、商業用不動産を対象に、収益還元法の考え方に基づく潜在的価値の向上を目的としている。不動産の収益価格の源泉はテナントからの実質賃料であるが、将来に亘って高水準の賃料収益力を維持・創造するためには、賃貸借に係る契約をいかにデザインするかがカギを握る。旧借地借家法に基づく普通賃貸借契約では、創造的な不動産価値の向上は見込めない。そこで、2000年3月1日の施行以降利用可能となった定期賃貸借契約を前提に、経済合理的な契約デザイン技術の確立を試みた。

 著者は、大手建設会社で土木構造物の解析技術者として長らく実務に携わった経験を持つ。この研究では、解析実務で積上げた技術・ノウハウをベースに、金融工学の権威である刈屋武昭先生が提案した分析枠組みを取り入れた商業用不動産の価値向上分析ツールを開発したので併せて紹介する。